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5G通信の光と影 - ドコモの5G通信で「パケ止まり」を体感

携帯大手3キャリアの5G (第5世代移動通信システム) サービスが一般向けに始まったのは2020年3月25日。執筆時現在で、サービス開始からすでに2年が経過しています。

筆者も、最近ドコモの5Gプランを契約し、手持ちの5GスマホXperia 1 II)にSIMを挿して、5G通信を存分に体感しています。

ドコモオンラインショップで手数料を払わず契約変更

ドコモでは、4G(Xi)から4Gへのプラン変更など、プランの変更前後で通信方式が変わらない場合は店頭手続きしても手数料がかかりません。ですが、4Gから5Gへプランを変更したり、反対に5Gから4Gへプランを変更する場合など、プランの変更前後で通信方式が変わる場合は、店頭手続きをすると3,300円の事務手数料が発生してしまいます。

ドコモオンラインショップでオンライン手続き(SIMのみ契約)を利用すると、この事務手数料が0円になるためお得なのですが、現状では一部のプランからしかオンライン手続きが利用できません。例えば、筆者は4G契約でシェアパックを利用していましたが、この場合はオンラインで直接「5Gギガホプレミア」などのプランに乗り換えることができませんでした。

そこで、まず店頭で4Gの「ギガホプレミア」プランに変更し、翌月初めに新しいプランが適用開始されてから、オンラインで「5Gギガホプレミア」プランに申し込む、という方法を取ることで、事務手数料を払うことなく無事に5Gプランに乗り換えることができました。

SIMのみ契約の場合、受け取りにドコモショップを使用することで、本来であれば別途発生する送料を無料にすることができます。店頭手続きと同様、受け取りに少し書面上のやり取りが発生する点が煩雑ですが、その場合でも追加で手数料がかかることはありません。

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今回受け取ったSIMカードは水色の「Ver.6」と呼ばれるタイプ。チップ部分のみを折り取り、手持ちのスマートフォンに差し替えたら、Webで開通手続きを行って完了です。開通手続きを行うまでは今までのSIMカードが利用できますが、手続き後は新しいSIMカードしか利用できなくなるため注意が必要です。

エリア内では速度を存分に発揮、レイテンシはまずまず

筆者が所有しているスマートフォンXperia 1 II」は、ミリ波帯には対応しませんが、ドコモの提供するSub-6帯の2つのバンド「n78, n79」を両方とも利用できます。理論値で、受信時最大3.4Gbps、送信時最大182Mbpsの速度が提供されています。

早速、福岡市の警固(けご)公園にて「ドコモスピードテスト」アプリを使用して通信速度を測定してみました。結果はご覧の通り。

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下りは理論値の2割強、上りも理論値の2割程度と、理論値と実測値に大きな開きがありますが、4Gと比べて速度は大幅に向上しています。

別の日に、同じ場所で5Gと4Gで速度を測り比べた際は、5Gで下り630Mbps/上り40Mbpsだったのに対し、4Gでは下り152Mbps/上り31Mbpsと、4Gでは下りの速度が大きく落ち込む結果となりました。

レイテンシに関しても調べてみましたが、4Gの場合でRTTが概ね70~130ミリ秒であるのに対して、5Gの場合で50~60ミリ秒という結果に。以前、筆者がUQ WiMAX 2+を使用していた頃も50ミリ秒程度のRTTだったので、現時点ではドコモの5Gは大幅に低遅延な通信を実現できているとは言えなさそうです。

待望の無制限プランがようやく実現、未来を変えるか

ドコモでは、5Gサービス開始当初から、「5Gギガホ」プランで容量無制限キャンペーンを展開し、他キャリアでもデータ使い放題を謳うプランが展開されています。

従来、ユーザーはデータ量の概念を意識しながらモバイルデータ通信を利用することを強いられていました。大容量の通信を行う際はWi-Fi環境のある場所に移動するなど、インターネットの利用に「場所の制約」「通信量の制約」が生じていました。

5Gの導入によって多くのトラフィックを処理するキャパシティが生まれ、高速な通信をいつでもどこでも利用できるようになれば、人々のスマートフォンの利用スタイルを大きく変える可能性があります。高速大容量なモバイルインターネットを要求する新たなアプリケーションやサービスが登場したり、PCやスマートフォンとは異なる全く新しいモバイルデバイスが普及する可能性があります。

今はまだ5Gの実力を発揮する応用技術が一般に普及していませんが、5Gで実現される「高速大容量通信」にはそれだけのポテンシャルがあるといえます。

もはや通過儀礼?『パケ止まり』を早速体感

5Gサービスの開始から2年が経ち、目まぐるしい速さでエリア展開が進むドコモの5Gですが、筆者の自宅付近もいつの間にか5Gが提供されていました。これで自宅でもモバイル通信が使い放題になるかと思いきや、実はこれがとてつもない罠でした。

―「5G契約にしたのに4Gより遅くなる」「通信が止まる、なかなか読み込みが進まない。4Gのほうがはるかにマシ」このようなユーザーの声をSNSで見かけることがあります。このような症状は、通称「パケ止まり」と呼ばれています。

具体的な症状としては、それほど容量の大きくないWebページの読み込みがなかなか始まらず、しまいには「インターネットに接続されていません」とブラウザにエラーが出たり、スムーズに読み込んでいたはずの動画が突然止まり、読み込み待ちを表す「クルクルと回る円」が表示され続けたり、といったものがあります。通信速度が遅いと言うよりも、通信が途切れたまま復帰しないように見受けられる症状が目立ちます。

以下に紹介する動画も、「パケ止まり」の典型的な症状をよく示しています。

www.youtube.com

このような「パケ止まり」については、各社より対策が発表されており、以下の記事などで紹介されています。

www.nikkei.com

所感

5G自体はまだ始まって間もないサービスであり、エリアや通信品質が安定するまで時間がかかるのは理解できます。ですが、ユーザーの立場からすると、新しい技術を利用していて対価も払っているにもかかわらず、古い通信技術を利用するよりもかえって不便になるという事実に対し、納得できない方が多いのではないでしょうか。

技術的にも、4Gの既存インフラを活用して円滑な通信制御を行うためにEN-DCを導入しているにもかかわらず、その導入目的である円滑な通信制御が全くできておらず、かえって通信品質の悪化を招いているというのはとても惜しい話です。

今後、5Gは新しい技術の導入や普及が進み、高度化を繰り返していきます。5年後、10年後、今の4Gと比べてどれだけ5Gが進化するのか楽しみです。ユーザーに「5Gになってよかった」と言ってもらえるような未来が来て欲しいと思います。

Xperia 1 II (SIMフリー版) で楽天5Gが使えない理由を考える

ソニーの5G対応スマートフォンXperia 1 II」の国内向けSIMフリー版で、楽天モバイルの5G NSAサービスが利用できない問題について考察します。

Xperia 1 II ってどんなスマホ

Xperia 1 II」は、2020年に発売されたソニー初の5G対応スマホです。切り欠きのない21:9のシネマワイドディスプレイに、Photo ProやCinema Proといった高機能な撮影アプリを搭載、さらには3.5mmオーディオジャックを欠かさず搭載するなど、ソニーらしさが存分に盛り込まれた一台です。

日本ではdocomoauからキャリアモデルとして発売される一方で、ソニーストアからも、デュアルSIMに対応したSIMフリーモデルの「XQ-AT42」が発売されました。日本メーカー製フラッグシップスマホSIMフリーモデルが国内で正規流通するのはただでさえ珍しいですが、デュアルSIMに対応しているスマホとなるとさらに希少な存在です。XQ-AT42は、キャリアモデルと比べてRAMやストレージの容量が増加しており、性能面でも大幅にブラッシュアップされています。

私は2021年4月頃にXQ-AT42を購入し、docomo楽天モバイルのSIMを挿して利用しています。

なぜか楽天モバイルの5Gが使えない(らしい)

そんなXQ-AT42ですが、どうやら楽天モバイルの5Gが使えないらしいのです。とはいっても、メーカーおよび楽天モバイル側からは一切情報が出ていません。なので信憑性には疑問がありますが、あるソニー特約店のブログ記事にて「楽天モバイルの5Gには対応しない」といった旨の記述を見つけることができます。

kunkoku.com「通信方式の違いにより非対応」という、ふわっとした表現ですが、通信方式のどこがどう違うというのでしょうか。

ちなみに、楽天モバイル側では相互接続性の確認が一切取れていないようで、5Gだけではなく4Gの動作も含め、一切の情報が掲載されていません。メーカーサイトの仕様を見ても、具体的にどのキャリアでどの通信が利用できるかという情報については詳しく掲載されておらず、特に5Gについては「 通信事業者によっては、端末が対応のバンドであっても通信できない場合があります」という、若干歯切れの悪い文言が掲載されるに留まっています。

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Xperia 1 II (SIMフリー版) は楽天モバイルへの対応状況を確認できず

5G NSAのしくみについておさらい

現在各キャリアで運用されている個人向け5Gサービスは、NSA (Non Stand-Alone) と呼ばれるネットワーク構成が採用されています。接続制御用のアンカーバンドとしてLTEを使用しつつ、より高速なデータ通信サービスを提供するために5G NRを併用する、というものです。LTEとNRを同時に利用する仕組みを「EN-DC」と呼びます。NSA構成では、ユーザーデータをNR側で、制御情報をLTE側で流すという、いわゆるC/U分離を行えますが、日本の大手キャリアではLTEとNRの両方にユーザーデータを流すことで、下り最大3Gbpsを超える理論値速度を実現しているようです。現状のNSA構成の5Gを総括すると、4Gにおけるキャリアアグリゲーションを長期的に進化させつつ、SA構成の5Gにシームレスに橋渡しをするものと言ってもよいかもしれません。

5G NSAにおいては、5G NRの基地局であるgNBと、LTE基地局であるeNBが協調して動作します。このためにLTEの仕様拡張が行われており、eLTE (enhanced LTE) と呼ばれています。eLTEは既存のLTEとの後方互換性を有します。

NSA構成では、報知情報とよばれる、基地局の存在を知らせたり各種運用パラメーターを端末に通知する情報を、gNBでは流さず、その代わりにeNBから流します。この報知情報に、gNBの存在を知らせる情報も含まれています。

以下の記事で、5G NSAの仕組みについて詳しく触れられています。

www.itmedia.co.jp

docomo (4G契約) と楽天、それぞれのeLTEの掴み方を比較

端末が現在掴んでいるバンドや周波数帯域幅、電波強度などを一括表示できるアプリとして、NetMonsterというアプリがあります。このアプリでは、5G NSA基地局への接続状況や、接続失敗した場合の状況などを簡易的に表示することもできます。

docomoの4G契約のSIMを入れ、端末の5G機能をオンにし、5G通信エリア内をうろうろすると、NetMonster上でこのような表示を見ることができます。

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上部に、4G LTEと5G NSA Disconnectedと表示されています。少なくとも、gNBの存在を通知する報知情報を受信しているはずだということが分かります。また、下部のペインにはより詳細な情報が表示されており、キャリアから5Gネットワークへの接続を拒否されたことが分かります。私が所持しているdocomoのSIMはすべて4G契約のみで5Gが利用できないため、正しい挙動を示していると思います。

また、楽天モバイルのSIMでau5Gエリアのパートナー回線に接続した場合も、上記のdocomoの場合と全く同じ挙動を示します。auのeLTEも問題なく受信できており、なおかつ5Gの契約情報がないため5Gネットワークへの接続を拒否されているようです。

問題は、楽天回線エリアでの挙動です。5Gに対応したエリアの一つ、博多駅のすぐそばにある音羽公園で5Gに接続できないか試みたのですが、NetMonsterの画面上で見ても、gNBへの接続を試みた形跡が確認できませんでした。エリアマップ上でもSub-6とミリ波の両方に対応しており、Twitter上でも5Gへの接続に成功した報告が上がっている場所なので、問題なくeLTEもNRも電波が吹いているはずですが...。

eLTEの掴み方からみた考察

楽天回線の5Gに接続できない理由はいくつか考えられますが、「5G NRを吹いているバンドが端末側で対応していない」とか、「基地局側で対応しているEN-DC組合せが端末側で対応していない」といった理由ではないように思われます。eLTEによる報知情報をうまく受信できていない、あるいは受信したものの端末側が何らかの理由でeLTE基地局に対して5G NSAでの接続要求を投げていない、のどちらかが濃厚だと考えています。前者は考えにくく、おそらく後者じゃないかなと見ています。

また、同じ楽天モバイルのSIMであっても、au5Gエリアでパートナー回線に接続した場合は、docomoの場合と同じように、5G NSAへの接続要求を投げて拒否されている、という所が興味深いポイントです。

結局、原因はなんなのか

楽天モバイルのSIMであっても、楽天回線の5Gエリアのとパートナー回線の5Gエリアで挙動が異なることから、コアネットワーク側の問題であるという仮説を立てることができます。

LTEにおいて端末からの接続要求を処理するのがMMEですが、楽天モバイル側のPRにもある通り、楽天モバイルauのMMEはS10インターフェースで相互接続されています。パートナー回線エリアでは、まずauのMMEと楽天モバイルユーザーの端末が接続され、楽天モバイル側のMMEと協調動作する?と思うのですが、楽天回線エリアではauのMMEは経由しないはずです。このことから、本端末は楽天モバイルのMMEに接続されても、5G NSAでの接続要求ができないなどの仮説を立てることができます。corp.mobile.rakuten.co.jp

また、楽天モバイル基地局を含めた完全仮想化ネットワークを構築しているようですが、何らかの問題で、楽天モバイルのeLTE基地局から通知される報知情報をうまく処理ず、gNBの存在を本端末が認識できない、という可能性は拭えません。

そのほかにも原因について仮説を立てることができます。それは、本端末が特定のキャリアに対してのみ5G NSAへの接続要求を投げる仕様になっているのではないか?というものです。特定のキャリアとは、docomoauSoftBankの3社のMNOおよびそれらを利用するMVNOです。

この端末ですが、5Gのn77、n78、n79の3つのバンドについて、日本国内のみで利用できる(=国外では一切利用できないという意味なのか?)という仕様になっています。これらのバンドを利用している国は日本以外にもあると思いますが、それにもかかわらず、国内のみで利用できるよう制限を掛けているみたいです。実はその制限に引っかかって、楽天モバイルの5Gを利用できないのでは?と仮説を立ててもよいはずです。たとえば報知情報でgNBの存在を受け取った際に、MCCとMNCを見て5G NSAネットワークへの接続要求を投げるかどうか判断していれば、今回のような症状が起きるのは不思議ではありません。いささか乱暴な仮説であり、根拠に欠けますが......。

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XQ-AT42の仕様。5Gは国内のみ対応としている

いくつか本記事で仮説を立ててみましたが、端末と基地局との間で実際にどのようなパケットをやり取りしているのか解析できていない以上、これ以上真相に近づくことは難しいです (私個人の知識不足も大きいです) 。詳しい方がいればコメントを頂けると幸いです。

所感

SIMフリースマートフォンは、キャリアモデルと異なり、モバイル通信に関してキャリアもメーカーもあまり積極的にサポートしてくれない点が欠点であるということが分かりました。キャリアモデルでは、キャリア側の通信提供仕様の変化に追従してソフトウェアアップデートが提供されることがあり、発売からしばらくの間はキャリアの最新の通信仕様に合わせて使用することができたりしますが、SIMフリーモデルではそのようなことはあまり望めなさそうです。やはり、通信速度や安定性にこだわるならば、手厚いサポートが受けられるキャリアモデルを利用することには大きなメリットがあると言えそうです。